叛逆の王子 -ひとりの少女が世界を支配した-
世界は、静かに支配されていた。
巨大企業「アストラコア」は世界を統合し、国境と戦争を消した。
だが、ある細胞が発見された日から、その世界は歪み始めた。
人を救うために生まれた「フィーチャー細胞」
不治の病を癒やし、人に常識を超えた力を与えるその細胞は、宿る身体の部位によって異なる能力を発現させる。
眼、腕、脚――細胞が宿る場所によって、能力も、戦い方も異なる。
だが、その力を使い続けるほど、細胞は持ち主の身体を内側から蝕んでいく。
その特異な細胞を持つ者は「継星者」と呼ばれ、豊かさと特権を与えられるようになった。
一方、細胞を持たない者たちは、世界の外側へ追いやられていく。
アストラコアが世に広めたその細胞は、いつしか人類を二つに分けていた。
そして、アストラコアの頂点に君臨するのは、フィーチャー細胞によって不死身の肉体を得たひとりの少女だった。
二十年前、その支配に反旗を翻した継星者たちがいた。
「抗う者たち」と呼ばれた彼らは、アストラコアへ戦いを挑み――そして、敗れた。
敗れた彼らは歴史の表舞台から姿を消し、あとには英雄の名と、ところどころ、「何かが欠け落ちた」記録だけが残された。
――その空白に何があったのか、誰も覚えていない。
二十年後、荒廃した街ナフィリアで、小さな義賊団を率いる青年ラドは、自らの出生も、両親の過去も知らずに生きていた。
そんな彼の前に、かつて「抗う者たち」の中心にいたという男が現れ、告げる。
「お前は、世界に抗った英雄の息子だ」
両親から受け継いだ力。
人の命を奪えない剣。
姿を消した養母。
誰の記憶にも残されていない、過去の空白。
そして、かつて世界へ抗った者たちが果たせなかった使命。
真実を追うほど、ラドはアストラコアが隠してきた研究と、世界を支配する少女の中に残された、もうひとつの願いへ近づいていく。
倒すべき敵は、本当に彼女なのか。
受け継いだ力は、呪いなのか、それとも救いなのか。
これは、英雄になりたかったわけではないひとりの盗賊が、目の前の誰かを見捨てられず、仲間とともに世界へ叛き、二十年前から受け継がれた悲劇の果てに、ひとつの答えを選ぶ物語。
身体に宿る異能がぶつかり合う能力戦と、二十年を超えてつながる謎。
支配と救済、継承と反逆を描く、近未来SF×ダークファンタジー。
価格270円